Last Updated on 2025年2月12日 by nekoto
薬事法は昭和三十五年に施行された法律です。
当時、健康保険制度による国民皆保険を実現するために策定されました。
これにより販売業者が規制の対象となりました。
また、流通する医薬品や医療用具も安全で有効で、一定の品質があることが確認されなければ販売できないようになりました。
その後、時代とともに数回の改正を行い、平成26年11月25日に施行された際に「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」と名称が変わっています。
この改正でより細かな規制を行うことができるように、医療機器や再生医療等製品などが医薬品とは異なる章立てとなったことが名称変更の主な理由です。
この法律の適用範囲は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品になります。
それぞれに対して品質、有効性、安全性が確保されている状態を維持して保健衛生上の危害の発生や拡大を防止することや指定薬物の規制に関する措置を講じます。
日本独自の規制で、他国の承認などの許認可がされている製品でも、日本で流通する場合には改めて承認等の手続きが必要となります。
この法律には、製品に対する規制と業者に対する規制の二面性があります。
製品については、承認制度があり必要な内容を記載した申請書を提出し、審査を行い、品質、有効性、安全性が担保されていると判断された場合に流通することを承認されます。
承認のための審査は独立行政法人 医薬品医療機器総合機構によって行われます。
申請者からの申請内容が十分と判断されるまで質疑が行われ、最終的には有識者による会議を経て、厚生労働大臣が承認します。
治験と呼ばれる臨床試験が行われるのも、有効性や安全性を確認する必要があるからです。
医療機器では、一部の分類で第三者の認証機関による審査が行われています。
医療機器の多様性から承認審査するだけでもかなりの時間がかかります。
迅速に有効な医療機器を患者に届けることが重要なため、認証基準と呼ばれる条件に合致したものは第三者認証機関が認証するという制度です。
基準にはJISなどの工業規格が規定されて、規格への適合性が審査されます。
現在では国際整合が行われ、海外の規格も適用できるようになりました。
また、最もリスクの低い製品については届出を行うことで承認や認証が不要です。
これらの手続きを完了したのちに、販売や広告することを許可されます。
海外で製造されている製品については、輸入することが可能になります。
承認等に有効期限はありませんが、適切に管理した状態で製造されていることを確認するための定期監査があります。
この監査は、承認を取得したとおりに製造されていることを確認するためのものです。
このようにして一度取得した承認等が形骸化しないようなシステムになっています。
もう一面の規制として業許可があります。
法律で定められている業種は、製造販売業者、製造業者、販売業者、修理業者、貸与業者の5つがあります。
製造販売業者は、製品の品質、有効性、安全性を担保する責任を持つ業種です。
承認などの申請ができるのは製造販売業者だけで、いわばメーカーの役割を果たします。
製造業者をコントロールし、販売業者や貸与業者に製品を納め、修理業者に品質に関する指示を行います。
製造業者は、製造販売業者の管理下で承認等で認められたとおりに製品を製造します。
プログラムの設計や滅菌を行う業者、最終製品を保管する業者も含まれます。
販売業者や貸与業者は製造販売業者より下された製品をエンドユーザーに販売したり、貸与したりします。
医薬品の場合は、薬局等の対面販売がこれに含まれます。
修理業者は、製造された製品で不具合が発生した時に元の状態に戻す責任を有します。
これらの業種は、基本的に業許可の取得が必要です。
所在地の都道府県や自治体に申請を行い、実地監査によって適切であることが確認できた場合に許可されます。
それぞれの業種には責任者の設置が必要です。
製造販売業者については、品質の責任者、安全管理の責任者、全てを監督する総括責任者の三役が必要となります。
このようにして、売り上げ重視によって品質や安全性が軽視されないように権限の分配を義務付けています。
そのため品性の責任者や安全管理の責任者は営業に携わることができないことになっています。
医療機器には、医薬品と異なり中古という概念があります。
使い古された医療機器の品質確保も製造販売業者の責任になります。
市場で使用される製品が安全に使われていることを監視するために不具合や感染症の恐れがあるが場合に行政に報告する義務が課せられています。
患者の安全が脅かされるような事態が発生した場合には、医療機関に速やかに注意喚起を行い拡散防止を行うものです。
薬事法は、このようにして患者が不当に不利益を被らないよう、適切な製品が流通し、使用される仕組みを構築しています。